宇宙の始まりについて

宇宙の始まりは138億年前です。超高温•超高密度の火の玉である「ビックバン」の急膨張により誕生したとされています。その謎の答えだとされているのはビックバン直前の”宇宙の始まりの瞬間”をとらえた「インフレーション理論」なのです。
1981年に東京大学の佐藤勝彦名誉教授が発表したインフレーション理論は、宇宙誕生の”10のマイナスの44乗”秒後から”10のマイナスの36乗”秒後という超短時間に、極小だった宇宙が急膨張し、その際に放出された熱エネルギーがビックバンの火の玉になったと説明する理論です。この時、顕微鏡で見えないような極小な宇宙ですが、一瞬のうちに1センチほどの大きさになりました。1センチと聞くと小さく感じるかもしれませんが、インフレーション瞬間の膨張速度は光速より速く、砂一粒が一瞬のうちに銀河以上の大きさに、シャンパンの泡一粒が一瞬のうちに太陽系以上の大きさになる程の急速であり、その爆発的な膨張速度から佐藤名誉教授は「指数関数的膨張モデル」と名付けられました。

真空エネルギーと相転移

素粒子物理では、何もない空間「真空」にも、水が氷に変わる(←相転移)ことのように高いエネルギーを持った真空が、低いエネルギーの真空に相転移(一つの相から相へと移ること)をするとしています。
インフレーション理論は、誕生直後の宇宙は真空のエネルギーが高く、これに、斥力(反発し合う力のこと)が働いて宇宙は急激に膨張すると説明するものです。真空のエネルギーに満ちた空間は互いの押し合うことをアインシュタインの相対性理論が示しているからであります。
急激に膨張した宇宙では相転移が起こり、水が氷に変わるときに熱が放出されるように、真空のエネルギーも相転移によって膨大な熱エネルギーを放ち、この熱によって宇宙は超高温の火の玉(ビックバン)になったのです。

•相転移とは

固体、液体、気体のような物質の状態(相)が、温度や圧力などの変化で劇的に変わること。境目の温度などを転移点という。分かりやすい例は、水が氷になったり(凝固)、氷が水になったり(融解)、する現象。この現象は温度によって起こることなので、相転移していると言える。


•斥力とは

引力の対義語で、反発し合う力のこと。互いの押し合う力。


•真空のエネルギーとは

宇宙創世のごく初期に、宇宙の急膨張を引き起こしたとされるエネルギー。インフレーション理論によれば、真空の相転移が生じ、そのエネルギーが潜熱(温度変化に寄与しない熱)として解放されて熱に転じ、超高温の宇宙が加速膨張したと考えられている。

   

インフレーション証拠となる重力波


インフレーションの理論の決定的な証拠はまだ見つかっていません。
インフレーションほどの急膨張であれば、巨大な星の爆発など質量を持った物体が運動するときに生じる時空の歪みを光速で伝える「重力波」が生じるはずです。
ですが、地球に届く重力波は極めて微弱で、直接の観測は困難であります。
理論的には、観測できる最古の光だとされる「宇宙背景放射」に現れた特殊なパターン(模様)から、間接的に「インフレーションの痕跡」を見つけ出すことができると考えられています。
宇宙誕生のときに発生した重力波が宇宙背景放射にぶつかり、そこに独特の渦巻模様を作り出しているというのです。 渦巻き模様が見つかれば、強力なインフレーションの証拠となります。
重力波の痕跡にはインフレーションのメカニズムに関する重要なインフォメーションが含まれているはずで、未知とされるダークエネルギーについての知見を得るきっかけとなるかもしれません。
超弦理論(ひも理論)の裏付けになる可能性もあります。また、将来的には、直接重力波を観測できるかもしれません。